麝香(ジャコウ)
麝香(ジャコウ)は、中国、ネパール、ロシアなどの山岳地帯に生息している雄の麝香鹿(ジャコウジカ)の腹部にある香嚢中の腺分泌物を乾燥したものです。
この香りは、雌を誘引し、また縄張りのマーキングのために発するもので「麝」という漢字からもわかるように、鹿の放つ香りが矢を射るように遠くまで飛ぶことを表しています。
そのため香りの王者とも言われ、高貴な神仙薬(不老不死の薬)として、またムスクの名でもよく知られているように、高級香水の原料としても古くから用いられてきました。
麝香(ジャコウ)の主な働き
麝香(ジャコウ)は中国最古の薬物書「神農本草経」では、上薬(命を養う薬)に分類されており、その効果として『久しく服用すると「邪気」を除き、夢をみて飛び起きたり、寝ていて悪夢にうなされる事がなくなる』と記されています。
また本草書として最も著名な「本草網目」では、心を鎮め精神を安らかにし、一切な悪気及びおびえ、恍惚を治すばかりでなく、お腹の冷えや痛み、つかえを取り、さらに酒毒を消し去る効果もあるとされています。
現代中国で麝香(ジャコウ)はストレスや血管障害などにより全身の「気」の流れが滞ることによって生じる様々な病態に応用されています。つまり全身をめぐる「気」の流れをスムーズにすることにより、自然な睡眠リズムを整え、ストレスによる睡眠中の過度の緊張を和らげ、睡眠障害を改善する効果があり、麝香(ジャコウ)は睡眠改善薬 飲むアロマテラピーとも言われています。
薬理作用による裏付
麝香(ジャコウ)に関して最近さまざまな薬理作用が報告されています。
その一つに強心活性を示す「ムスクライドA1」という新規化合物が発見され、今後心臓病治療薬としての可能性が示されています。
古来の経験学的な使用法の有用性が、現代科学の手によって裏付けされたといえます。